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ブラック企業 体験談

【会社辞めたいエピソード9】お前の価値はゼロ!?コンサル業界のブラック企業で生死を彷徨う!

北海道在住 41才 男性 ジン

「おまえの価値はゼロだ!」と、私のデスクの前で、仁王立ちになった男が怒鳴りました。

あれから15年以上が経つのに、その光景を忘れられません。

どんなに忘れたくても、忘れることが出来ません。

私が23歳で初めて就職したコンサルティング会社で、実際に起こった出来事です。

そのとき怒鳴った男は、当時50代半ば、その会社の経営者です。

肌が浅黒く、筋肉質で、それとはアンバランスに身長が低い男性でした。

「おまえ、次ミスしたら、身体で覚えてもらうぞ!」、その男が言いました。

私は何も言えず、うつむきました。

正直なところ、なぜ怒鳴られているのか、良く理解できませんでした。

と言うのも、中途採用で入社したばかりで、何も分からなかったからです。

法律資格を活かして入社したコンサルティング業界の会社ですが、経営コンサルタントとして活動しているのは、社長ひとりでした。

それ以外の社員は皆、書類作成がメインです。

社員それぞれ作成する書類は異なります。

私はエクセルを使って、何らかのテンプレートを作成していました。

いま、その内容を思い出そうとしても、どんなテンプレートだったか…良く思い出せません。

エクセルで罫線を引いて枠を作り、その中に、何かしらの文字を入れたことは覚えています。

しかし、誰が、どのような用途で使うテンプレートかは、まるで思い出せないのです。

その理由として考えられるのは、以下の2点です。

1.脳が無意識に記憶を抹消している

2.そもそも仕事内容を把握していなかった

1は分かります。

「過酷なブラック企業の記憶を、いつまでも留めたくない」と脳が考えて、無意識に記憶を消しているのでしょう。

2に関して思い当たるのは、そもそも私は、仕事の指導を受けていないのです。

その会社は、社長を含めても10人未満の中小企業でしたが、仕事の割り振りの大半は、社長が行っていました。

少なくとも、私に与えられた仕事はそうですね。

「これをやれ!」

「あれをやれ!」

「自分で調べて全部やれ!」

そのようなザックリとした指示でした。

人生初会社員の私にとって、一体、なにを、どうすれば良いか分からず、途方に暮れることが多かったのです。

私には直属の上司もいましたが、その上司も社長から激しいパワハラを受けていたので、私に構っている余裕はなかったのでしょう。

冒頭の恫喝を受けたのは、入社から3週間~4週間、おそらく、そのくらいの早い時期かと思います。

「おまえの価値はゼロだ!」

当時の仕事内容は覚えていなくても、どれだけ脳が消したいと思っても、絶対に忘れられない言葉ってあるものですね。

「お前の価値はゼロ。次ミスしたら身体で覚えてもらう」

それまでの人生で、一度も聞いたことがない、衝撃的な言葉でした。

挫折の多い人生でしたが、大学中退後、猛勉強して法律資格を取得してからは、人生が逆転した気になっていました。

『こんな自分でも、本気になれば、出来るんだ』、素直にそう思えたのです。

資格取得後、実家を出るタイミングで仕事を探し、ハローワークで見つけたのが、その企業の求人でした。

もちろん最初からブラックと見抜けたわけではありません。

会社員経験もない、23歳の小僧にとって、面接の雰囲気だけでブラックと見抜くのは難しいでしょう。

ただ、少しおかしいと思ったのは、面接の場で、社長にこう言われたことです。

「その日に仕事が終わらなければどうする?」

私は深く考えず、こう答えました。

「終わるまで、やります」

その言葉を聞いて、社長がニヤリと笑ったことは覚えています。

入社後すぐに分かったのは、労働時間はあってないようなものだった、ということです。

要するに、サービス残業のオンパレードでした。

さらには、タイムカードさえありませんでした。

サービス残業を秘密にするため、あとから、適当に、労働時間をごまかしていたようです。

それでも恐ろしいのは、誰も、何も、意見を言えないことですね。

直属の上司も法律(特に労働基準法)に詳しかったのですが、それでも意見を言えない雰囲気でした。

明らかに労働基準法に違反している職場でも、苦言を言えない、言う気さえ起こらない、その背景に洗脳のプロセスがあると思います。

これは後から分かったのですが、徹底的に人格否定を行った後、「自分だけはあなたの味方だ」と伝えることで、人は洗脳状態になるそうです。

そのことを、どこまで社長が理解していたかは分かりませんが、手口は似ていますね。

冒頭の恫喝を受けた後、しばらくは社長に優しくされましたので。

中には、ブラック企業を辞められず、自殺してしまう方もいます(私の知人もそうです)。

『自分なんか、どこにも転職できない、何の価値もない、他では働けない』

性格が真面目な方ほど、そのように信じ込んでしまうのでしょう。

私もどちらかと言えば真面目なタイプなので、どんどん追い込まれましたが、途中から開き直りました。

恫喝に慣れたのかもしれません。

正直その辺りの記憶も薄いのですが、今から振り返ると、心が機能していなかったのだと思います。

何を見ても、何も思わない、何も感じない、ただ寝るために自宅に戻り、翌朝、早い時間に出社して仕事を行う。

そんな日々の繰り返しでした。

もちろん仕事中の私語もありません。

必要に迫られ、社員同士が話すときも、小鳥が囁くほどの小声です。

お葬式よりも暗い雰囲気の中、キーボードを打つ『カタ、カタ、カタ』という音だけが、オフィスに響いていました。

私以外の社員も、どこか病んでいたのでしょう。

特に男性社員は皆、同じ状況でしたね。

社会人経験が豊富な30代、40代の社員もいましたが、誰もが無言でした。

一度、仕事の報告か何かで、社長室に入っていく社員の姿を見かけましたが、案の定、恫喝されていました。

そんな社長ですが、仕事の実力は確かで、顧客先企業の信頼は厚かったようです。

今もそのブラック会社が存在しているかどうかは分かりませんし、コンサルティング業界全てが同じとも思いません。

経営コンサルティング会社と言っても、企業体質は様々ですからね。

ただし言えるのは、「経営者の考え方が社風を作り、経営者の性格が雰囲気を作る」ということです。

若い頃からガムシャラに働いてきた経営者は、部下にも同じ姿勢を期待すると思います。でも…働き方改革が推進されている今の時代、通用しない考え方ですよね。

結局私は、その会社をクビになりました。

正確には、「退職届を出せ」と言われ、言われるがまま提出しました。

それは今までにない退職の仕方だったそうです。体調を崩して辞める社員がほとんどだったので。

途中から開き直り、仕事中に生あくびをしていましたので、使い物にならないと思われたのでしょう。

無表情のまま生あくびをして、無表情のままパソコンに向かい、無表情のまま帰宅する。そして無表情のまま出社する。

今から振り返ると、あのとき「退職届を出せ」と言われなければ、より深刻な状況になっていたかもしれません。

自殺していたとは思いませんが、自分の命に無頓着な状態ではありましたね。何もかも、全てがどうでも良く、自分にも他人にも、関心がありませんでしたので。

その会社を退職し、転職した先は、今までとは真逆のホワイト企業でした。

サービス残業こそありましたが、パワハラはゼロで、社員が活き活きと働いていましたね。

全く異なる社風に驚きながらも、組織で働く楽しさを知り、少しずつ心が機能していきました。

以上が私のブラック企業体験談ですが、ブラックな環境で働くことにより、打たれ強くなったとは思います。

少々のことがあっても、「あの頃と比べれば」と思うと、乗り越えられるんですよね。

ただし、これだけは言えます。

私は一生、他者に向かって、「おまえの価値はゼロだ」とは言いません。

その言葉が、どれほど人を傷付けるか知っていますので。

そのことを教えてもらえただけでも、その企業には、心から感謝しています。